本記事では、PoE スイッチ(PSE)から PoE 対応の 無線アクセスポイント(PD)へ給電する方法を記載する。
給電機器はPSE(Power Sourcing Equipment)、受電機器はPD(Powered Device)と呼ばれる。
今回は検証機として、BUFFALOの PoE スイッチ「BIJ-POE-4P/HG」と ELECOM のアクセスポイント「WAB-S1167-PS」を用意した。
この2台の機器を使用して、よくある PoE スイッチと AP の設定と接続について紹介する。
PoE 対応 AP は電源ケーブルが付属していないことがある。今回用意した ELECOM の「WAB-S1167-PS」も電源ケーブルは付属していない。
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PoE はデフォルトで有効になっている
製品によるが、PSE も PD も PoE がデフォルトで有効になっている場合が多い。
特に、PD の PoE が無効になっていることはないだろう。PoE が無効になっていると、電源ケーブルを持っていない限りそもそも起動させることすらできないからだ。起動していない機械の設定は変えられない。
例えば、今回用意した機器の場合は下図のように Cat5 の LAN ケーブルで接続するだけで、アクセスポイントに電力が供給され、起動する。
ケーブルを接続するポートについて
LAN ケーブルをどのポートに接続するかだが、普通はすぐにわかるようになっている。
下図は黒い機器が PoE スイッチで白い機器が PoE 対応アクセスポイントだ。
PoE スイッチの方は分かりやすい。明らかに「DATA+PoE」がデータ通信+給電のためのポートだろう。当然「DATA」とだけ記載されているポートでは給電が行われない。
アクセスポインの接続ポートは少し分かり辛いが、PSE と PD の意味が理解できていれば迷うことはないだろう。PoE スイッチからきている LAN ケーブルを「PD(IN)」と記載されているポートに接続すれば、PoE スイッチから電力が供給され、電源が入るようになっている。
また、WAB-S1167-PS は「PSE(OUT)/LAN」というポートを備えており、PDポート(または電源ケーブル)で受電した電力の余剰分で給電を行うことができる。この機能は「PoE パススルー」と呼ばれる。
802.3af と 802.3at について
PoE パススルー機能について軽く触れたところで、IEEE 802.3af と IEEE 802.3at について解説する。
IEEE 802.3af と IEEE 802.3at は 現在の主流である PoE の規格で、IEEE 802.3af が 2003年に標準化されたもの、IEEE 802.3at はその後継規格で2009年に標準化された。
IEEE 802.3af と IEEE 802.3at では電力供給量が異なり、IEEE 802.3af の供給量が1ポートあたり最大15.4W、IEEE 802.3at は1ポートあたり最大30Wの電力を供給することができる。
IEEE 802.3at で受電し、IEEE 802.3af で給電する
IEEE 802.3af と IEEE 802.3at を理解していると、PoE パススルー機能の理解も簡単になる。
つまり、IEEE 802.3at(最大30W)で電力を受電し、IEEE 802.3af(最大15.4W)で電力を供給しているわけだ。
下図は ELECOM WAB-S1167-PS のパッケージイラストだが、次のように記載されている。
PoE パススルー機能搭載(IEEE 802.3af 準拠機器1台への給電機能)
※IEEE802.3at PoE 給電機器または AC アダプタから本製品への給電時のみ
ここまででお分かりいただけたと思うが、PoE はそこまで難しい概念ではない。むしろ、ただ使うだけであれば非常に易しい機能だ。
PoE で使用するケーブル
PoE は一般的に利用される LAN ケーブルで電源を供給することができる(というより、そもそものコンセプトがそれだ)ため、特別な LAN ケーブルは必要ない。
ただし、IEEE 802.3af は cat3 以上、IEEE 802.3at は cat5e 以上の LAN ケーブルを使用する必要がある。
今回の検証では PoE パススルーは行わないうえ、PD が IEEE802.3af なので cat5 の LAN ケーブルを使用していた。
なお、サイトによっては PoE は cat5e 以上の LAN ケーブルしか対応していないような書かれかたがしているが、実際はそうではないことに注意する必要がある。cat5e 以上の LAN ケーブルが必要なのは IEEE 802.3at だ。
PoE の注意点
最後の PoE の注意点について記載する。
PoEの脆弱性として挙げられるのは、LANケーブルがもともと通信専用であるということに起因している。元来、電力伝送には不向きな太さであり、構造なのである。この部分を理解せず、むやみに使用をすると厄介なトラブルを起こすことになる。
Cabling EX – 第24回 知っていますか?PoEの脆弱性
やはり、本来は電源供給を目的としない LAN ケーブルを使用する以上、時には動作の不安定や発煙といったトラブルを引き起こすこともあるようだ。