Fibre Channel と iSCSI の歴史

SAN(Storage Area Network)

Fibre Channel と iSCSI の歴史を語るうえで SAN の理解は必要不可欠です。

SAN とは何か。「SAN & NAS ストレージネットワーク管理(原題:Using SANs and NAS)」の著者である W. Curtis Preston 氏は以下の様に定義しています。

SANとは、ファイバチャネルやiSCSIのようなシリアルSCSIプロトコルで通信する2台以上のデバイスを指す

SAN & NAS ストレージネットワーク管理 より引用

SCSI(Small Computer System Interface)

SCSI とはコンピュータとストレージを接続するための規格の1つです。

元々は Shugart Associates 社が 1979 年に規格策定した SASI(Shugart Associations System Interface) が SCSI の元になっています。

Shugart Associates 社は、ディスク装置を容易に扱え、かつ共有できるような仕組みなら世間の興味を引くと考えて SASI を仕様化しました。

Shugart Associates(シュガート・アソシエイツ)

 

アラン・フィールド・シュガートが設立。後にゼロックスに買収される。設立者のアラン・フィールド・シュガートは Shugart Associates を設立後ほどなくして退社している。

 

アラン・フィールド・シュガートは1979年にフィニス・コナーとともに5インチハードディスクの製造を行う Shugart Technology(シュガート・テクノロジー)を興したが、Shugart Technology は Shugart Associates から商標権の侵害警告を受け Seagate Technology(シーゲイト・テクノロジー)に改称。

 

なお、現在のハードディスク市場は Western Digital、Seagate Technology、東芝によって寡占化されている。(おおよそ、WDが4割、Seagateが4割、東芝が2割だとされている。)

1982年には、ANSI のタスクグループが、SASI をベースに Small Computer System Interface のドラフトを書き上げました。SCSI は1986年に ISO 標準となっています。

シリアル SCSI

1986年に ISO 標準となった SCSI ですが、1990年7月には後継規格の SCSI-2 が承認されました。SCSI-2 は SCSI に標準コマンドセットを組み込むとともに、その他の機能を拡張したものです。データ転送速度も向上しています。

SCSI-2 はデファクトスタンダードとなったものの、元々からして SCSI はいいアイデアではないという意見もありました。ネガティブな意見のほとんどはパラレル伝送方式に起因するものです。

SCSI-1(規格としては “SCSI”ですが、一般的に最初の SCSI 規格をそう呼びます)と SCSI-2 ではパラレル伝送方式が利用されていました。

パラレル伝送方式は複数の導線に並行してデータを流す方式です。それに対してシリアル伝送方式では1本の導線にデータを順番に流します。

1度に複数のビットを同時にやりとりできるできるということで、かつてはシリアル伝送ではなくパラレル伝送で高速化を図っていました。

しかし、パラレル SCSI ケーブル内の複数の導線がそれぞれに干渉しあったり、転送距離が長くなると同時転送されたビットがほぼ同時に届くことが困難になることや、エラーが起きた場合の処置が煩雑になるという問題がありました。また、パラレル方式のデータ転送速度には理論上の限界があり、転送速度もシリアル方式に劣るようになりました。

こうした問題の解決には物理層の変更が不可避とされたため、最終的には SCSI の規格をいくつかの階層に分割することになりました。階層化は効果的であるということがネットワークプロトコル設計で既に実証済みだったためです。

SCSI-3 では SPI(SCSI Parallel Interface)に変わる選択肢(OSI参照モデルで言うところの、データリンク層以下の選択肢)として、シリアル SCSI、Fibre Channel、SSA(Serial Storage Architecture)、SCSI over ST、SCSI over VI、そして比較的新しい iSCSI プロトコルがあります。

Fibre Channel(ファイバチャネル)

Fibre Channel はIPI(Intelligent Peripheral Interface)プロトコルの拡張プロジェクトの一部として検討が始まりました。その後1988年にANSIが Tll 委員会内にワーキンググループをスター トし、IBM、Sun Microsystems、HP が FCSI(Fibre Channel System lnitiative) を形成し基本部分の技術ドラフトをまとめました。

ファイバー(Fiber)かファイバ(Fibre)か

ファイバ(fibre)チャネルと光ファイバー(fiber)とで、英文の上ではスペルが違うことに注意してほしい。当初、ファイバチャネルは光ファイバーケーブル上のみで使われる予定であった。しかし、銅線のサポートも加えられたとなって、標準委員会諸氏は困ってしまったのである。(光)ファイバー(fiber)チャネルなら話は早い。しかし委員会としては、ファイバチャネルは光ファイバーケーブルだけではないと、どこかで示したくなったのである。そこで英国風綴のファイバ(fibre)を用いることにし、今見るようなファイバチャネルとあいなったわけである。苦心のほどがしのばれる。

SAN & NAS ストレージネットワーク管理 より引用

ファイバチャネルは FC-0 から FC-4 の5層から構成され、FC-4 では上位プロトコルにマッピングするルールを既定しています。

FC-4 において、SCSI に変換されたものを特に FCP(Fibre Channel Protocol)と呼びます。

Wikipedia より引用

LAN では、システム同士の通信にはIP、IPX、もしくはその他の「よくある」ネットワークプロトコルが用いられる。SANでは、ストレージデバイスとの通信にあたっては、SCSI-3プロトコル(多くの場合、ファイバチャネルを介する)が用いられる。

「SCSI」という用語は多少、混乱を招くかもしれない。この略語はパラレルSCSIケーブルという物理的なメディアとトラフィックを搬送するプロトコルの双方を指しているのである。
比較をしてみるとわかりやすいかもしれない。IPトラフィックは銅製のツイストペアまたは光ファイバケーブル上を、イーサネットプロトコルで搬送される。SCSIトラフィックは銅線でできたSCSIケーブル上を、SCSIプロトコルで搬送される。

つまり、SCSIはIPとイーサネットプロトコルと同じ役割を任っているのである。SCSIトラフィックは、光ファイバ上のファイバチャネルプロトコルの上のSCSI-3プロトコルで搬送されもする。

つまり端的に言って、SCSI-3プロトコルはIPの役割を、ファイバチャネルプロトコルはイーサネットプロトコルの役割を、それぞれ果たしていると見ることができる。

LANはサーバ、クライアント、スイッチ、ルータの集合体で、IP、IPX、イーサネット、またはそれらに類似したプロトコルでデータを運んでいる。普通は、イーサネット上を流れるIPである。SANはストレージデバイス、サーバ、スイッチ、ルータの集合体で、SCSIとファイバチャネルプロトコルでデータを運んでいる。普通は、ファイバチャネル上を流れる SCSI-3 である。

SAN & NAS ストレージネットワーク管理 より引用

SCSI over IP (iSCSI)

SCSI over IP、別名「iSCSI」は Fibre Channel より比較的新しいコンセプトです。iSCSI インターフェイスカード(NIC)を装備したLAN上のホストは、iSCSI アダプタを装着した SCSI デバイスにアクセスできます。

Fibre Channel の FCP が SCSI プロトコルを Fibre Channel にマッピングしているのと同様に、iSCSI は SCSI プロトコルをTCPにマッピングします。

iSCSI に問題があるとすれば、100MB/sファイバチャネルは1台のホストがフルに使い切ることができるが、同じホストが100MB/sのギガビットイーサネットを使い切ることは難しいという点であろう(100MBはおおよそ1,000Mbすなわち1Gbである)。

つまり、同程度の速度を有するアーキテクチャだとしても、同等だとは限らないのである。iSCSIベンダー各社もこの欠点に気づき、「ラインスピード」で通信できるネットワークインタフェーイスカード(NIC)を開発している。

例えば、TCP/IPの処理をホストからNIC自体に移す手法などが導入されている。ラインスピードで通信するギガビットNICが出回り始めたこともあり、iSCSIはSAN市場をかなり蚕食することになるだろう。

SAN & NAS ストレージネットワーク管理 より引用

iSCSIとファイバチャネルは直接的に競合関係にあるが、iSCSIにはいくつか優位な点がある。

最大の差異は、世界のどこにでもストレージを設置できる点であろう。

遅延が大きいにしても、 インターネットに接続されていれば、レプリケーションやデータアクセスをどこからでもあたか もローカルかのように行える。ファイバチャネルでも可能だが、ちょっとしたプロトコル変換と 特殊なハードウェアが必要になる。そのうちに、通常のネットワーク技術と融合されるだろう。

SAN & NAS ストレージネットワーク管理 より引用

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